邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第6課

 

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」はじめに

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第4課

ケンポ・ソダジによる『仏説大乗荘厳宝王経』第05課 は口伝のみとなります。
ケンポ・ソダジによる解説:『仏説大乗荘厳宝王経』第06課

その時、那羅延天が現れ、一日はハエの姿となって訪れ、また一日はハチの姿となり、また一日はブタの姿となり、また一日は非人の姿となるなど、このように毎日姿を変えながら探っていた。私はその時、心の中でバラモン(※12)の法を実践することを考えた。那羅延天はこの法の実践を見て、銅窟に来て破壊を行い、門上にある七つの山を次々に取り除き、それぞれ異なる場所に投げ捨て、大声で閉じ込められていた人々に向かって叫んだ。
「無勝天子たちよ、あなたたちは大きな苦しみを受けているが、命を保っているのか、それともすでに死んでしまったのか?」
この呼びかけを聞いた人々は声に応じて答えた:
「私たちはまだ生きています。那羅延天尊、大いなる力と精進によって、私たちを苦しみから救ってください!」
その天は銅窟の七重の門を破壊し、その時、窟内にいた小王たちは、束縛から脱することができて那羅延天に会うことができた。彼らはそれぞれ心の中で思った:
「大力阿修羅王はすでに死んだのか、それとも今まさに死の時が来たのか?」
クシャトリヤ(※13)たちはさらにこう言った。「私は彼と戦って敵を倒し、土地を得て死ぬほうがよい。この禁縛を受けて死ぬべきではない。今こそクシャトリヤの法に従って彼と戦い、もし死ぬならば天国に生まれるのだ。」
その時、小王たちはそれぞれの宿舎で馬車を整え、武器を持ち、大戦を挑もうとした。その時、那羅延天はバラモンの姿に変わり、体は小柄で、鹿皮を身にまとい、手には三つ叉の杖を持ち、携帯物(座布団のような座る物)を持って私の門までやって来た。その時、門番は彼に向かって言った:
「この門に入るべきではない、小柄な者よ、ここに入るな!」
バラモンは言った:
「私は遠くからここに来たのだ。」
門番はバラモンに尋ねた:
「どこから来たのか?」
バラモンは言った:
「私は月氏国王のもとから来た大仙人だ。」
その時、門番は大力阿修羅王のもとに行って報告した:
「今、バラモンが来ましたが、彼は小柄な者です。」
大力阿修羅王は言った:
「その者が何を求めて来たのか?」
門番は言った:
「彼が何を求めているのかはわかりません。」
大力阿修羅王は言った:
「彼をここに連れて来い。」
門番は命令に従い、バラモンを中に招き入れた。大力阿修羅王は彼を見て、宝座に座らせた。 大力阿修羅王の師である金星はすでにその場におり、大力阿修羅王に言った:
「このバラモンは悪人であり、ここに来てあなたを破壊するのは確実です。」
大力阿修羅王は尋ねた:
「師よ、なぜそれを知っているのですか?」
師は言った:
「私はこれを知っている。」
大力阿修羅王は言った:
「彼がどのような姿をしているのかを知っているのか?」
師は言った:
「これは那羅延天です。」
この話を聞いた後、大力阿修羅王は心の中で思った:
「私は施しを行って裏切らない。今、彼は私を妨げ、破壊しに来たのだ。」
大力阿修羅王は言った:
「私は口が達者なので、まずはバラモンに何のためにここに来たのか尋ねるべきだ。」
バラモンは言った:
「私は王から二歩分の土地を求めています。」
阿修羅王はバラモンに言った:
「お前が求める土地は二歩分だが、私はお前に三歩分の土地を与えよう。」
そして金の瓶に清水を入れ、彼に渡して言った:
「土地を求めるならば、これを受け取れ。」
バラモンはそれを受け取り、呪いをかけて長寿と安楽を願った。その時、バラモンの小柄な姿は消えた。その時、金星は阿修羅王に言った:
「今、あなたは悪業の報いを受けるだろう。」
その時、那羅延天が突然姿を現し、両肩に太陽と月を背負い、手に鋭い剣、輪、棒、弓矢などの武器を持っていた。その時、大力阿修羅王は突然それを見て恐怖におののき、倒れて地に伏し、しばらくしてから起き上がった:
「今、どうすればいいのか?私は毒を飲んで死ぬべきか?」
その時、那羅延天は土地を歩いて測り、たった二歩分で三歩分には足りなかった:
「最初に約束したことに反して、今どうすればいいのか?」
那羅延天は王に言った:
「今、あなたは私の教えに従わなければならない。」
その時、大力阿修羅王は言った:
「私はあなたの教えに従います。」
那羅延天は言った:
「本当にそうですか?」
大力阿修羅王は言った:
「本当にそうです。この言葉は真実で、後悔や吝嗇の心はありません。」
その時、私はバラモンの教えに基づいて行った儀式の場所をすべて破壊し、金銀の宝物、美しい少女たち、衣服、宝鈴、傘蓋、素晴らしい払子、獅子の宝座、宝で飾られた黄牛、およびその他の宝で飾られた道具などをすべて破壊し、その時、集まっていた小王たちがそれらをすべて受け取り、大力阿修羅王が儀式を行っていた場所から出て行った。」
大力阿修羅王は観自在菩薩摩訶薩に言った:
「今、私は身心ともに思惟し、過去にバラモンの法に依って広大な布施の会を設けたが、その布施の対象が不浄であったため、私と私の眷属は、この鉄窟に閉じ込められ、大きな苦しみを受けているのです。観自在よ、私は今、帰依し、哀れみを垂れて、私たちをこの苦難から救い出してください。」
そして賛嘆して言いました:
大悲蓮華手に帰命します   大蓮華王、大吉祥
種種の荘厳の妙色身     首髻、天冠、厳かなる衆宝を帯ぶ。
頂戴するは弥陀の一切智   救度する有情は無数なり。
病苦の人が安楽を求めれば  菩薩は現身して医王と王となる。
大地は眼として日を明かにし 最上の清浄微妙なる眼
照して有情を矚れば解脱を得 解脱を得て妙相応す
猶し如意の摩尼宝の如く   真実の妙法蔵を能く護り
恒に六波羅蜜を説き     この法を称揚し大智を具う
我今虔懇至りりて帰依し   大悲の観自在を讃嘆す
有情は菩薩の名を憶念して  苦を離れて解脱し安隠を得ん。
悪業を作せば黒繩に墮ち   および大阿鼻地獄道に墮つ。
諸もろの餓鬼苦趣の者たちも 名を称え恐怖し皆解脱せん
かくのごとき悪道の諸有情も 悉く苦を離れ安楽を得ん。
若し人が恒に大士名を念ぜば まさに極楽界に往生し
如来、無量寿に面を見し、  妙法を聴聞し無生を証すべし。
「その時、観自在菩薩摩訶薩は、大力阿修羅王に対して授記を行い、次のように述べました:『汝は未来において仏と成り、吉祥如来、応供、正遍知、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、仏世尊と号されるであろう。汝はその時に、六字大明総持の門を証し、現在の一切の阿修羅王を未来において悉く救度するであろう。この仏刹においては、貪・瞋・癡という声は一切聞こえないであろう。』
その時、大力阿修羅王はこの授記を聞いて、百千の真珠や瓔珞、さらに種々の妙宝で荘厳された百千・万数の天冠や耳飾りを奉げ、受け取っていただけるよう願いました。
その時、観自在菩薩摩訶薩は、大力阿修羅王に対して次のように述べました:
『私は今、汝のために法を説く。汝はよく聞き、よく考えなさい。人生は無常であり、その命は幻のようであり、長く保つことはできない。汝らは常に心の中で、貪欲と愛着を持ち、大いなる福徳を求めるが、心は常に奴婢や人民、穀物や倉庫、大きな財宝を愛し楽しんでいる。また、父母や妻子、その他の眷属を愛し楽しんでいる。しかし、このような物事は、いくら愛し楽しんでいても、夢のように儚く、命が終わるときには何も助けにはならない。南贍部洲を離れることはできず、命終の後には倒錯した状態で、大奈河の膿と血が満ち溢れる流れを見る。また、猛火が燃え盛る大樹を見て、これらの光景を目にすると、心に大きな恐怖を抱く。その時、閻魔の獄卒が繩で縛り、鋭い刃の道を急いで引き摺り回す。歩くたびに足が切り裂かれ、無数のカラスやウミワシ、グルルル鳥、そして狂犬などが襲いかかり、体を食いちぎられる(※77)。そして、大地獄で極限の苦しみを受けることになる。歩くたびに鋭い棘が十六指分も伸び、一歩ごとに五百の棘が足に刺さり、苦しみと泣き叫びの声が響き渡る。
『私たちは愛着によって罪を作り、今、大きな苦しみを受けている。どうすればよいのか?』と悲嘆する。
閻魔の獄卒は言う:
『汝は過去において、一度も沙門に食物を施したことがなく、法を聞いたこともなく、塔や像を巡り歩いたこともない。』
その時、罪人たちは閻魔の獄卒に言う:
『私は仏法僧に対して罪を犯し、信仰を理解せず、敬意を払わず、常に遠ざかっていた。』
獄卒は答える:
『汝は自らの手でさまざまな悪業を積み重ねたため、今その報いを受けている。』
獄卒は罪人たちを閻魔王の元へ連れて行き、閻魔王の前に立たせる。閻魔王は言う:
『汝らは業報の場へ向かうがよい。』
その時、閻魔の獄卒は罪人たちを黒縄大地獄へと連れ、そこに投げ入れる。投げ入れられた罪人たちは、百本の槍で身を貫かれても命を失わず、さらに二百本の大槍で身を貫かれても命は続き、最後に三百本の大槍で一斉に刺されても命は尽きない。命が続く限り、彼らは大火坑に投げ込まれ、そこで熱鉄の丸薬を口に入れられ、喉を焼き尽くし、内臓や腸は煮えたぎり、全身が焼け爛れる。」
観自在菩薩は続けて大力阿修羅王に言いました:「この苦しみを受けている時には、誰一人として救いの手を差し伸べる者はいない。汝はこれを知りなさい。私は今、汝のためにこの法を説いた。汝らは自ら福を作るために行動しなさい。」

《以下漢文続き》

是時、有那羅延天、忽於一日現身爲蠅而來探視、又於一日而現蜂形、又於一日而現猪身、又於一日現非人相、如是日日身相變異而相探覷、我時心中思惟作是婆羅門法、那羅延天見作斯法、來於銅窟而相破壞、去除門上七山一一棄擲異處、高聲喚彼所禁人言:
”無勝天子等、汝身受大苦惱、汝等身命爲存活耶爲當已死?”
此諸人等聞其喚問、隨聲應言:
”我命今在、那羅延天尊、大力精進、救我苦難!”
其天便乃破壞銅窟七重之門、時諸小王在於窟内、得脱繋縛之難而見那羅延天、是時各各心中思惟:”其大力阿蘇囉王爲已死耶?爲復而今死時方至?”
刹帝利等又作是言:”我寧與彼鬪敵相殺死而有地、不應受此禁縛而令我死、我今當依刹帝利法、與彼戰鬪相殺、設死其地而得生天。”
時諸小王各於自舍、排駕車乘鞁勒鞍馬、執持器仗欲大戰鬪、時那羅延天現婆羅門、其身矬陋、著以鹿皮而爲絡腋、手中執持三岐拄杖、所坐之物、隨身持行來至我門、時守門者告於彼言:
”不應入此門、内汝矬陋人止勿入中!”
婆羅門言:
”我今自遠而來到此?”
守門者問婆羅門言:
”汝從何來?”
婆羅門曰:
”我是月氏國王處大仙人也、從彼而來。”
時守門者往大力阿蘇囉王所白言:
”今有婆羅門、其身矬陋而來到此。”
大力阿蘇囉王言:
”是人今來何所須耶?”
守門人言:
”我今不知所須云何?”
大力阿蘇囉王告言:
”汝去喚是婆羅門來。”
守門之人既奉教勅、遂喚婆羅門入於其中、大力阿蘇囉王見已、與寶座令坐、大力阿蘇囉王師奉所事金星先已在中、告大力阿蘇囉王言:
”今此婆羅門是其惡人、而來到此決定破壞於汝”
”師今何故而能知耶”
告言:
”我今知此。”
”所現之身知是云何?”
”此是那羅延天”
既聞此已心即思惟:
”我行惠施而無反覆、今來障難破壞於我。”
大力阿蘇囉言:
”我口辯才、當須問是婆羅門言、今來我所於意云何?”
婆羅門曰:
”我從於王乞地兩歩。”
阿蘇囉告婆羅門言:
”卿所須地而言兩歩、我當與卿其地三歩。”
先以金瓶授與淨水、告言:
”須地、卿當受取。”
婆羅門受已而呪願曰安樂長壽、時婆羅門矬陋之身隱而不現、爾時金星告阿蘇囉王言:
”汝今當受惡業果報。”
時那羅延天忽然現身、於兩肩上荷負日月、手執利劍輪棒弓箭如是器仗、時大力阿蘇囉王、忽然見已慖惶戰慄、其身蹎仆迷悶躄地、良久而起:
”今當云何?我寧服其毒藥而死耶!”
是時、那羅延天歩量其地、只及兩歩更無有餘、不迨三歩。
”違先所許、我今云何?”
那羅延言王:
”今應當隨我所教。”
時大力阿蘇囉王白言:
”我如所教。”
那羅延曰:
”汝實爾耶?”
大力阿蘇囉王言:
”我實如是、此言誠諦、心無悔悋。”
是時我依婆羅門教、作法之處悉皆破壞、所有金銀珍寶、莊嚴童女、衣服、寶鈴、繖蓋、妙拂、師子寶座寶嚴黄牛、及諸寶莊嚴具、時諸小王衆等悉皆受之、便乃出是大力阿蘇囉王作法之地。’
大力阿蘇囉王白觀自在菩薩摩訶薩言:
”我今身心思惟、爲於往昔依婆羅門法、而設廣大布施之會、所施之境垢黒不淨、我今并諸眷屬、是以禁縛在斯鐵窟受大苦惱、觀自在、我今歸依願垂哀愍、救脱我等如是苦難。”
而讃歎曰:
歸命大悲蓮華手 大蓮華王大吉祥
種種莊嚴妙色身 首髻天冠嚴衆寶
頂戴彌陀一切智 救度有情而無數
病苦之人求安樂 菩薩現身作醫王
大地爲眼明踰日 最上清淨微妙眼
照矚有情得解脱 得解脱已妙相應
猶如如意摩尼寶 能護眞實妙法藏
而恒説六波羅蜜 稱揚斯法具大智
我今虔懇至歸依 讃歎大悲觀自在
有情憶念菩薩名 離苦解脱獲安隱
作惡業故墮黒繩 及大阿鼻地獄道
諸有餓鬼苦趣者 稱名恐怖皆解脱
如是惡道諸有情 悉皆離苦得安樂
若人恒念大士名 當得往生極樂界
面見如來無量壽 聽聞妙法證無生
”是時、觀自在菩薩摩訶薩、與大力阿蘇囉王授其記別:
’汝於當來得成爲佛、號曰吉祥如來、應供、正遍知、明行足、善逝、世間解、無上士、調御丈夫、天人師、佛世尊、汝於是時、當證六字大明總持之門、今此一切阿蘇囉王、汝於當來悉皆救度、如是佛刹一切有情、而不聞有貪瞋癡聲。’時大力阿蘇囉王聞斯授記、即以價直百千眞珠瓔珞、復以種種妙寶莊嚴百千萬數天冠珥璫、持以奉上願垂納受。
”爾時觀自在菩薩摩訶薩、告大力阿蘇囉王言:
’我今爲汝説法、應當諦聽汝應思惟、乃至於人無常幻化命難久保、汝等而常心中、思惟貪愛具大福徳、心常愛樂奴婢人民、乃至穀麥倉庫及大伏藏、心常愛樂父母妻子及諸眷屬、如是等物雖恒愛樂、如夢所見、臨命終時、無能相救、得不命終此南贍部洲。由是顛倒命終之後、見大奈河膿血盈流、又見大樹猛火熾燃、見斯事已心生驚怖、是時閻魔獄卒以繩繋縛、急急牽挽走履鋒刃大路、擧足下足剗割傷截、而有無數烏鷲矩囉囉鳥、及猘狗等而啖食之、於大地獄受其極苦。所履鋒刃大路之中、復有大莿長十六指、隨一一歩有五百莿、刺入脚中悲啼號哭而言:
”我等有情皆爲愛造罪業、今受大苦、我今云何?”
時閻魔獄卒告言:
”汝從昔來未曾以食施諸沙門、亦未曾聞法犍稚聲、未曾旋繞塔像。”
時諸罪人告閻魔獄卒言:
”我爲罪障於佛法僧、不解信敬而恒遠離。”
獄卒告言:
”汝以自造種種惡業、今受苦報。”
獄卒於是將諸罪人往閻魔王所、到已立在面前、時閻魔王言:
”汝去往於業報之處。”
是時、閻魔獄卒驅領罪人、往黒繩大地獄所;到已是諸罪人、一一抛擲入地獄中;既擲入已、一一罪人各有百槍、攅刺其身命皆不死;次有二百大槍、倶攅刺身其命亦活;後有三百大槍、一時攅刺其身命亦不死、命既生活。是時而又擲之入大火坑命亦不死、而於是時以熱鐵丸、入在口中令呑咽之、脣齒齗㗁及其咽喉悉燒爛壞、心藏腸肚煎煮沸然遍身燋壞。’
告大力阿蘇囉王言:
’受斯苦時而無一人能相救者、汝當知之、我今爲汝説如是法、汝等應當躬自作福。’

※77    而有無數烏鷲矩囉囉鳥、及猘狗等而啖食之      無数のカラスやウミワシ、グルルル鳥、そして狂犬などが襲いかかり、体を食いちぎられる。(梵:अनेकैः काकगृध्रश्वानादिभिर्भक्ष्यन्ते[anekaiḥ kākagṛdhraśvānādibhirbhakṣyante])。「数多くのカラスやハゲワシ、犬などによって食い尽くされる。」となる。「矩囉囉鳥」は不明

ー第6課以上ー

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第7課