邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第9課

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」はじめに

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第8課

ケンポ・ソダジによる解説:『仏説大乗荘厳宝王経』第09課

仏は除蓋障菩薩に告げられた:
「その時、聖馬王とはすなわち観自在菩薩摩訶薩であり、彼が私を危難と死の恐怖から救い出したのである。
除蓋障よ、今私は観自在菩薩摩訶薩の功徳の量を詳しく説くことはできません。しかし、少しだけその功徳について述べます。
除蓋障よ、観自在菩薩の身の毛孔の中には、無限の功徳があります。金色の毛孔の中には、無数の百千億数え切れないほどの乾闥婆が住んでいます。彼らは輪廻の苦しみを免れ、常に最上の快楽を享受し、天界の物品を使い尽くすことがありません。彼らは悪心を持たず、憎しみや嫉妬、貪欲、瞋り、愚痴を持たず、常に八正道を行い、法の喜びを享受しています。
除蓋障よ、その金色の毛孔の中には、如意宝珠が光を放ち、乾闥婆たちの思念する必要なものをすべて満たします。この金色の毛孔の中からは、このような現象が現れます。また、黒色の毛孔の中には、無数の百千億の那庾多の神通力を持つ仙人たちが住んでいます。中には一つの神通力を持つ者もいれば、二つ、三つ、四つ、五つ、そして六つの神通力を持つ者もいます。
さらにその毛孔の中には、銀の地に黄金の山、白銀の峰が現れ、三十七の愛染蓮華がその山を美しく荘厳しています。その山の中には、八万四千の神仙たちが住んでおり、その仙人たちは劫樹を出現させます。劫樹は深紅の身を持ち、黄金と白銀の枝葉を持ち、宝の光を放ちます。また、各々の毛孔からは、四宝池が現れ、八功徳水で満ちており、美しい華が池を満たしています。
池の岸辺には、天の妙香の樹や栴檀の樹が立ち、また荘厳な劫樹には天の冠や耳飾り、珠玉の瓔珞が飾られ、さらに宝鈴が掛けられています。その上には美しい天衣や天界最高の服(※75)が掛けられています。各々の劫樹の下には百人の乾闥婆の王がいて、常に音楽を奏でています。また、群れの鹿や羽を持つ霊鳥がその音楽を聞きながら、すべての有情が輪廻の苦しみを受けていることを思惟します。彼らは考えます:
『なぜ南贍部洲の人々は、生老病死や愛別離といった苦しみを受けているのか』
この鳥や鹿たちは、この大乗荘厳宝王経という名を思惟し、その結果、天の美味しい飲食物や妙香、天衣などが思いのままに満たされるのです。」
その時、除蓋障菩薩は世尊に申し上げました:
「私は今、この話を聞いて非常に希有であると感じます、世尊!」
仏が言いました:
「善男子、あなたの意見ではどう思いますか?」
除蓋障菩薩は世尊に申し上げました:
「このように、有情がただこの経の名号を思念するだけで、これほどの利益と安楽を得るのなら、もしもさらにこの経を聞き、それを写し取り、受け入れて持ち、読誦し、供養し、恭敬する者は、常に安楽を得ることでしょう。また、もし誰かがこの経の中から一文字でも書き写したなら、その者は未来において輪廻の苦しみを受けず、屠殺や下賤な家に生まれることは決してありません。その生まれた身体は決して背中が曲がったり、足が不自由だったり、唇が裂けたり、皮膚の病気や他の嫌な相を持つことなく、完全な身体を持ち、感覚器官がすべて揃い、大いなる力と威勢を持つでしょう。ましてや、完全にこの経を受け入れ、持ち、読誦し、書写し、供養し、恭敬する人が得る功徳がどれほど偉大かは言うまでもありません!」
その時、世尊は讃嘆して言われました:
「善哉!善哉!除蓋障よ、汝は今このような法をよく説いた。今、この会中には無数の天龍、薬叉、乾闥婆(※22)、阿修羅(※18)、迦楼羅(※23)、緊那羅(※24)、摩睺羅伽(※20)、人および非人、在家信男(※10)、在家信女(※11)など、数えきれないほどの衆生がいるが、彼らは皆、汝が説いたこの法を聞き、この広大な法門を汝の質問によって聞くことができたのだ。」
その時、除蓋障菩薩が世尊に申し上げました:
「世尊よ、今、世尊がこの妙法を説かれたことにより、天人や衆生たちは堅固な信仰心を生じました。」
その時、世尊が讃えて言いました:
「善哉、善哉、善男子よ、汝はこのように再び観自在菩薩について問い、彼の身の毛孔に現れる功徳を尋ねた。除蓋障よ、観自在菩薩の毛孔には、宝で荘厳された毛孔があり、その中には無数の百千万倶胝(※76)那庾多(※64)の乾闥婆女が存在する。彼女たちは容貌端厳で、形体は美しく、多様に荘厳され、その姿は天女のようである。彼女たちは貪瞋癡の苦しみに侵されることはなく、人間の少しの苦悩も受けることがない。これらの乾闥婆女は、三時において観自在菩薩摩訶薩の名号を念じ、その時に一切の所求の物を得るであろう。」
その時、除蓋障菩薩が仏に申し上げました:
「世尊、私はその毛孔の中に入り、その中にあるものを見たいと思います。」
仏が除蓋障菩薩に告げました:
「善男子よ、彼の毛孔には境界がなく、虚空のように限りも障害もないのです。善男子よ、その毛孔は障りも触れもなく、苦しみを感じることもありません。その毛孔の中に普賢菩薩摩訶薩が入り、十二年にわたり行じたものの、彼はその境界を見出すことができませんでした。各々の毛孔の中には、それぞれの仏部が存在し、その中に住んでいるのです。ゆえに、普賢菩薩ですらその境界を見極めることができなかったのです。いかにして他の菩薩がその境界を見られるというのでしょうか?」
仏は言いました:
「善男子よ、私もこのような微細で静かな境地を見ることはできません。彼は相がないために、十一の顔を持ち、百千の目を具えた大身を現し、広大で深遠な静寂を得ています。その知恵は輪廻を超え、救済も種族も智慧も説法も見えません。このように、すべての法は影響のようであり、善男子よ、観自在菩薩のように、自性を持たず、至る所で見られないのです。さらには如来でさえもその本質を見ることはできません。どう思いますか?善男子よ、普賢菩薩を含むすべての菩薩たちは、観自在菩薩の変化を理解することができない、不思議な力を持っています。善男子よ、観自在菩薩摩訶薩は、種々の救済を現し、無数の倶胝(※76)那庾多(※64)の有情を極楽世界に往生させ、無量寿如来を見せ、法要を聞かせることで、すべての者が菩提道を成就することができるのです。」
除蓋障菩薩は言いました:
「世尊、どうすれば私は観自在菩薩摩訶薩を見られるのでしょうか?」
仏は言いました:
「善男子、その菩薩は必ずこの娑婆世界に現れ、私に会い、礼拝し供養するであろう。」
その時、除蓋障菩薩は仏に申し上げた:
「世尊、観自在菩薩摩訶薩がここに現れるのは、いったいいつのことですか?」
仏はお答えになった:
「善男子、この有情の根が熟する時期を待って、観自在菩薩摩訶薩は先にここに現れるであろう。」
その時、除蓋障菩薩摩訶薩は手を合わせながらこのように思いました:
「私は今、どうしてこのような罪障を持っているのか。寿命が長くても何の役にも立たず、観自在菩薩を敬い礼拝することができないとは、盲目の者が道を歩むようなものだ。」
そして、除蓋障菩薩は再び仏に尋ねました:
「世尊、観自在菩薩摩訶薩は実際にはいつこの地に来られるのでしょうか?」

《以下漢文》

佛告除蓋障菩薩:
”時、聖馬王者即觀自在菩薩摩訶薩是、於是危難死怖畏中救濟於我。”
除蓋障、我今不能廣説是觀自在菩薩摩訶薩功徳數量、我今爲汝略説是觀自在、身毛孔中所有功徳。
除蓋障、觀自在菩薩身、有金毛孔而於其中、有無數百千萬倶胝那庾多彦達嚩、彼等無輪迴苦、而常受於最勝快樂、天物受用無有窮盡、無有惡心無憎嫉心無貪瞋癡、常行八聖道恒受法樂。
除蓋障、於是金毛孔中、復有放光如意寶珠、隨彼彦達嚩衆、思念所須隨意滿足、於是金毛孔中有斯出現。復有黒毛孔而於其中、有無數百千萬倶胝那庾多、具通神仙之人、其中有具一神通者、或有具二三四五神通之者、亦有具足六神通者、於是毛孔之中、復現銀地黄金爲山白銀爲峯、三十七愛染蓮華寶莊嚴其山。於其山中而有八萬四千神仙之衆、如是仙衆出現劫樹、深紅爲身黄金白銀以爲枝葉、放寶光明。又於一一毛孔現四寶池、八功徳水充滿其中、而有妙華盈滿池中。
於池岸側有天妙香樹栴檀香樹、又有莊嚴劫樹、上懸莊嚴天冠珥璫、復有殊妙瓔珞而嚴飾之、又於其上懸衆寶鈴、又挂妙衣憍尸迦服。於斯一一劫樹之下、各有一百彦達嚩王、而於恒時奏諸音樂、復有群鹿羽族靈禽、聞斯樂音悉皆思惟:
‘諸有情類多受輪迴之苦、何故南贍部洲人、見受生老病死愛別離等如是諸苦?’
此諸禽鳥鹿等、於是思惟此大乘莊嚴寶王經如是之名、於是而有天妙上味飮食、天諸妙香天妙衣服等物、隨彼所思如意滿足。”
是時、除蓋障菩薩白世尊言:
”我今聞是甚爲希有、世尊!”
佛告:
”善男子、於意云何?”
除蓋障菩薩白世尊言:
”如是有情心唯思念此經名號、尚獲如是利益安樂、若復有人得聞此經、而能書寫受持讀誦供養恭敬、如是之人常得安樂、或復有人於此經中書寫一字、斯人當來不受輪迴之苦、而永不於屠兒魁膾下賤之類如是家生、所生之身而永不受背傴攣躄醜脣缺漏、疥癩等病不可喜相、獲得身相圓滿、諸根具足有大力勢、何況具足受持讀誦書寫供養恭敬之人所獲功徳!”
爾時、世尊讃言:
”善哉!善哉!除蓋障、汝今善説如是之法、今此會中無數百千萬、天龍、藥叉、彦達嚩、阿蘇囉、蘖嚕拏、緊那囉、摩護囉誐、人及非人、鄔波索迦鄔波斯計如是等衆、皆悉聞汝説如是法、得聞斯之廣博法門由汝所問。”
時、除蓋障菩薩白世尊言:
”世尊於今説斯妙法、天人衆等生信堅固。”
是時、世尊讃言:
”善哉!善哉!善男子、汝能如是重復問是觀自在、身毛孔中所現功徳、除蓋障彼復有寶莊嚴毛孔、是中有無數百千萬倶胝那庾多彦達嚩女、面貌端嚴形體姝妙種種莊嚴如是色相状如天女、彼衆貪瞋癡苦、皆不能侵於彼身分、而亦不受人間少分苦惱之事、彼彦達嚩女而於三時、念是觀自在菩薩摩訶薩名號、而於是時彼等、獲得一切所須之物。”
是時、除蓋障菩薩、白佛言:
”世尊、我欲入彼毛孔之中看其所有。”
佛告:
”善男子、彼之毛孔無有邊際、如虚空界亦無障礙、善男子如是毛孔、無障無礙亦無觸惱、彼毛孔中普賢菩薩摩訶薩、入於其中行十二年不得邊際、見諸毛孔一一之中、各有佛部於彼而住、是故普賢不能見其邊際近遠、餘諸菩薩云何而得見彼邊際耶?”
時、除蓋障菩薩、白佛言:”世尊、普賢菩薩摩訶薩、於彼毛孔行十二年、不能見其邊際、而諸毛孔各有百佛在於其中、普賢菩薩摩訶薩尚不能得見於邊際、我今云何而得入於是中耶?”
佛告:
”善男子、我亦不見如是微妙寂靜、彼無相故而現大身具十一面、而百千眼圓滿廣大、得相應地湛然寂靜、大智無得無有輪迴、不見救度亦無種族、無有智慧亦無有説、如是諸法如影響故、善男子觀自在菩薩、無見無聞彼無自性、乃至如來亦所不見。於意云何?善男子、普賢等諸菩薩、皆具不可思議、不能了知彼觀自在之所變化。善男子、觀自在菩薩摩訶薩、變現種種救度無數百千萬倶胝那庾多有情、令得往生極樂世界、見無量壽如來、得聞法要皆令當得成菩提道。”
時、除蓋障菩薩白世尊言:
”不知以何方便、令我得見是觀自在菩薩摩訶薩?”
佛告:
”善男子、彼菩薩必當來此索訶世界、而來見我禮拜供養。”
時、除蓋障菩薩白佛言:
”世尊、可知是觀自在菩薩摩訶薩、而來於此爲於何時?”
佛告:
”善男子、候此有情根熟之時、彼觀自在菩薩摩訶薩先來到此。”
時、除蓋障菩薩摩訶薩、以手搘揌作是思惟:
”我今云何有是罪障、壽命雖長而無所益、不得見彼觀自在菩薩恭敬禮拜、猶如盲人在道而行?”
時、除蓋障菩薩、復白佛言:
”世尊、彼觀自在菩薩摩訶薩、爲實何時而來於此耶?”

※58 嬌奢耶/憍尸迦服。あでやかに飾られた衣服

《第9課おわり》

邦訳「仏説大乗荘厳宝王経」第10課