当初記憶されていた小学校低学年時の3番目である
小学校二年生のことだったと思う。
お気に入りのバットとグローブをカバンに入れて担いで遊びに行く道の途中で、前に知らない同学年ぐらいの女の子が二人歩いていた。仮にDさんとする。知り合いたい(仲良くなりたい?)という気持ちもあったのか脅かしてやろうと思った。驚かせる方法を模索していてふと思いついたのが、肩に担いでいるバッグを肘で押してカバンに入ったバットを操作してぶつけてみようと思いついたのだ。
今ならどう考えても恐ろしいことを考えついたもので、「バッグの握り紐の輪が肩を支点にバッグが動いてまわって出ているバットが相手に当たる」と推測してどうしてもやってみたい想いと脅かそうという思いと合わさって実際にやってしまったのだった。
相手に大怪我を追わせてしまい、立ちすくんで座り込んでしまったその子を横目に、声もかけず、その場を立ち去ってしまった。
悲鳴や音も感触も何も全く覚えていないが、バットの先が相手にあたったことだけは分かったし、その時のことは「あ、なんか想像したことと違うことになっちゃった!」ぐらいの記憶しか残っていない、逃げたというよりどうしていいのかわからなかったというのが正解なのかもしれない。
学校の校庭まで行きつき、誰も友達もおらず何もすることなく、そのまま家に帰った記憶はあるが、私だとわかるまで時間はそうかからずすぐに特定されていた。家に帰った私を母親は待ち構えていて、ひどく怒られ、連れ回され、そのDさんのお宅に連れて行かれ頭下げさせられた記憶がある。
今考えてもバカバカしい発想なのだが、距離感や方向やタイミングに至るまでバッチリ過ぎて当たりどころ悪く頭にあたってしまったことで、怪我をさせてしまったというわけである。大した怪我ではなく大事にはいたっていないと聞いた記憶があるが、それよりも、後に謝りに連れて行かれて出てきた包帯グルグル巻きだったDさんを見た事で「事の重大さ」に気付かされたという、何ともお粗末なこととなった。
ただただ心の傷として残った思い出すのも恥ずかしい出来事で、その時は嘘をつかず正直に話して懸命に眼の前の出来ることで精一杯だった。
《認知》<~直前>「驚かせよう・振り向かせよう」「こうしたらこんな風になるかな」<直後>「座り込んじゃった、どうしたらいいかわからないや、ほっとくしかない」<事後>「悪気はなかった、想像できなかった」「ごめんね」
《気分・感情》<~直前>落ち着かない、やってみたい<直後>勢い想像通り、不安、心配、緊張<事後>嘘を言わない、頭の中真っ白、ごめんなさい。
《身体反応》<~直前>ワクワク、ドキドキ<直後>ドッキリ、ハラハラ、アレ?どうして?<事後>意気消沈、謝罪
《行動》<~直前>肘で押してみた、支点は肩口・力点バットの柄、止まった時間・音<直後>やり過ぎをやり過ごす、大失敗であることに気がつく<事後>怒られ怖くなった、逃げたいけど逃げられない
小学校二年生のことだという根拠は、好きだったE先生から呼び出されたことが記憶に残っていて、注意を受けた記憶もあるのだが、事実確認された程度であったのかもしれないし、しこたま怒られたのかもしれないしその辺りはいまいち覚えていない。ただ悪気はなかったことと、子どもがしたこととはいえ、おそらく生まれて初めて、人に怪我をさせてしまった記憶であり、本来ならば反省と遺恨に基づく記憶であってもおかしくないのだが、今考えてみると特に暴力に対しての反省が欠如していたんでは?と思い起こされることだったりする。当初はそれがなぜなのかよくわからなかった。
後にDさんと何度か話したような記憶もあるのだが、被害者と加害者当然の結果というか、意識的には互いに避け合っていたような形となった。
兎にも角にも、Dさんには改めて謝罪を残しておきたいと思う。ごめんなさい。「子どものしたこと」「過ぎたこと」とはいえその時の怪我が後のBさんにどんな影響を与えたかわからないことと、あり得ない恐怖にさらしてしまったことは、「過ぎたこと」では済まされないことだと思っている。